その他の病気について
白内障
目の中のレンズである水晶体(レンズ)が、徐々に濁ってくる眼の病気を白内障といいます。
先天的なもの、外傷によるもの、けがや薬、あるいは糖尿病によって起こる場合もありますが、ほとんどは老化現象の一つとして起こるもので、加齢性のものでは50歳頃から症状が出始めます。
白内障イコール手術が必要なわけではなく、濁りが強くなってものが見えにくくなり、眼鏡をつかっても視力が出ず、日常生活に不自由を感じるようになった時点で手術を検討するのが一般的です。進行の度合は個人差がありますが、それまでの間、進行を遅らせるために目薬を使うことがあります。
緑内障
緑内障は、目が正常な機能を保てる「適正な眼圧」以上の眼圧等によって視神経が圧迫され、視野が狭くなったり部分的に見えなくなったりする病気です。
眼圧が高くなるのは、何らかの原因で房水の産生と排出がアンバランスになるためで、その結果、視神経が萎縮し、視野(目を動かさずに見える範囲)が狭くなります。厚生労働省研究班の調査によると、我が国における失明原因の第1位を占めており、日本の社会において大きな問題として考えられています。
一度障害を受けた視神経は、再生することがないため、緑内障は失明する危険を伴う大変怖い病気といわれています。
40歳以上の日本人には、20人に1人の割合でかかる身近な病気です。近年、緑内障は若年化・増加傾向にあるといわれており、早期発見、早期治療が大切なので、40歳前後の方は、一度眼科での検査をおすすめします。現時点では、緑内障を治療しても、一度障害された視神経を回復させることはできません。
しかし、医師の指示通りに点眼薬などの薬物治療を続ければ、視野障害の進行を出来る限り抑えることができます。
そのため、高血圧や糖尿病などの慢性疾患と同様に、ご自分の病気を理解し、医師の指示にしたがって定期的な受診をおこたらず、じっくりと治療に取り組むことが大切です。
糖尿病網膜症
糖尿病の3大合併症の一つで、糖代謝異常に伴い、眼の網膜が傷み、視力低下が起きる病気です。 近年、糖尿病の患者数は増え続けていますが、糖尿病は合併症の怖い病気で、腎臓や神経、そして眼に現れることが多く、これらは三大合併症といわれます。 網膜は眼底にある薄い神経の膜で、瞳から入った光の明暗や色を感知するという重要な役割を持っています。網膜には無数の細かい血管が張り巡らされていますが、血糖が高い状態が長く続くと、血管に多くの負担がかかり、網膜の細い血管は少しずつ傷み、変形したりつまったりします。糖尿病網膜症は、糖尿病になってから数年〜10年以上経過して発症するといわれていますが、単純糖尿病網膜症、前増殖糖尿病網膜症、増殖糖尿病網膜症と徐々に進行してゆき、最悪の場合硝子体出血や網膜剥離を来たし失明に至ります。
糖尿病そのものも自覚症状の少ない病気だということに加え、網膜症も初期の段階では自覚症状がほとんどないので、糖尿病性網膜症は成人の失明原因として非常に大きな比率を占めているのが現状です。 糖尿病と診断された人は目の症状がなくても定期的に眼科眼科の検査を受けるようにしましょう。
ドライアイ
ドライアイは涙の絶対量の減少や、蒸発の亢進などによって、涙の状態が崩れてしまう状態です。涙には角膜(黒目)の表面を保護するという重要な役割があるため、ドライアイになると角膜の表面にキズができ、痛みや違和感の原因になったり、ひどい場合は視力不良の原因となります。
近年、よい薬も出てきており、基本的には点眼治療で涙のコントロールを行います。涙に近い成分の点眼や、ヒアルロン酸の高分子で涙を角膜の上に留めたりする点眼、涙を安定させるムチンという物質の分泌を促す点眼、症状や状態にあわせて、薬を選択することで涙の状態をコントロールし、症状を抑えることができます。ただ、それではコントロールしきれない難治性のドライアイの場合は、涙点プラグという治療を行います。
眼瞼下垂
上まぶたを開いたり閉じたりするための筋肉(眼瞼挙筋-がんけんきょきん)の働きが弱まり、目が充分に開かなくなって、瞼(まぶた)が常に下がる状態のことです。 原因には先天性、後天性とありますが、近年の高齢化に伴い加齢性眼瞼下垂や、アレルギーで強く目をこすったり、ハードコンタクト長期装用者にもよく見られます。 眼瞼挙筋(がんけんきょきん)は、途中から挙筋腱膜(きょきんけんまく)を介してくっついた薄い膜のような状態で、まぶたの瞼板(けんばん)を覆っています。そのため、眼瞼挙筋が収縮すると、挙筋腱膜を通して瞼板を持ち上げ目を開くのですが、この瞼板と挙筋腱膜がなんらかの原因によって、外れてしまったり、緩んだりしてしまうと、今まで連動した動作に遊びが発生し、開き具合が悪くなります。
まぶたを開け閉めしようとしても、挙筋腱膜(きょきんけんまく)の力が瞼板に伝わらず、思い通りに目を開け閉めしずらくなってしまいます。眼瞼下垂になると、まぶたを上げるために通常以上の力が必要になったり、力を補うために首や肩、額の筋肉まで無意識に使う事で、目の疲れ・頭痛・肩こりを引き起こすとも考えられています。
麦粒腫(ばくりゅうしゅ)・霰粒腫(さんりゅうしゅ)
「メイボ」「メバチコ」「モノモライ」・・・・・、呼び方はいろいろありますが、眼瞼の分泌腺にできる良性の腫瘤です。麦粒腫と霰粒腫は何がちがうかというと、おおざっぱにいうと前者(麦粒腫)は分泌腺に細菌感染が起こり、膿んでしまった状態です。膿んでいるので、熱を持ったり、強く発赤したり、ジンジン痛くなったりということが多いです。
基本的には感染に対する抗生剤の点眼・内服を処方し、きれいに治癒することが多いですが、強く感染し、膿んでいる麦粒腫の場合は、針でついて膿を出してあげることで、比較的早期に治癒に向かいます(これは手術というよりは、普通に診察室で行う簡単な処置となります)。後者(霰粒腫)は、炎症主体によるもので、膿ではなく、炎症組織のしこりのような物が中に入っているため、ステロイドの点眼・軟膏を処方し、治療いたします。ある程度の大きさまで軽快すれば、後は自然吸収されてしまうことも多いですが、ある程度以上の大きさであれば、自然吸収が困難な場合があり、その場合は手術適応となります。
翼状片
翼状片とは、通常、鼻側の眼球結膜(白目の部分)が角膜(黒目)中央に向かって、入り込んでくる疾患です。三角形(翼状)に血管を伴っ た増殖組織が伸びてくるのです。太い血管を伴っているので、常に目が充血しているように見えたり、黒目がかけているように人から見られたりします。また、角膜を引っ張って乱視(見たものが歪んで見える)を引き起こす場合もあります。良性腫瘍ですので、初期のうちは見た目が気にならなければ、そのままにしておいても問題ありません。
整容的な部分と、乱視の悪化で手術適応となります。更に進行して、瞳孔領(瞳の真ん中)に腫瘍がかかってきますと、もちろん、見えなくなりますので、そうなれば絶対的な手術適応ですし、定期的な診察のもと、そうなる前に手術を受ける必要があります。また、原因は、紫外線などが言われておりますが、はっきりわかっていません。
加齢黄斑変性症
加齢によって、網膜のほぼ中央にある黄斑部に障害が生じる病気です。「黄斑」とは、とても小さいものですが、物を見るための重要な部分です。従って、黄斑部に異常があると、物が歪んで見えたり、視力が著しく低下したり、最悪なケースでは視力を失ってしまうということになります。
加齢黄斑変性は、大きく分けると萎縮型と滲出型の2つのタイプがあり、萎縮型は、加齢とともに黄斑の組織が萎縮し、視力が徐々に低下していくタイプで、滲出型は、新生血管と呼ばれる異常な血管が発生し、網膜側に侵入して障害をもたらすタイプです。
治療法としては、光線力学療法、薬物療法、レーザー治療などがあります。
初期症状だけでは、年齢のせいだと見過ごしてしまう患者さんも多くいらっしゃいますが、自覚症状が出てからでは難しい治療になったり、多くの障害が残ってしまう場合も少なくありません。自覚症状のない方も、50歳前後には眼科での検査をおすすめします。
飛蚊症
皆さんは、黒い点や虫のようなもの、または薄い雲のようなものが視野の中に見えたことはないでしょうか。
視界にごみや虫のようなものが飛んでいるように見える症状を飛蚊症と呼びます。
目を動かしても、影は同じ方向に移動しかつ細かく揺れるので、その名のとおり目の前を蚊が飛んでいるように感じます。ただし、影の形は、ひも状のものやリング状のものなどさまざまです。いつもは気が付かなくても、白い壁を見たときや空を見たときにははっきりと現れることが多いといわれています。
ほとんど場合は、加齢などの生理的変化によるものですから、心配いりませんが、たまに網膜剥離など重篤な疾患の前触れであることがあるので注意が必要です。
網膜裂孔・円孔、網膜剥離
網膜裂孔は網膜の破れ目のことで、網膜裂孔は網膜に丸い穴が開いてしまうものを「網膜円孔」、硝子体に網膜が引っ張られるてできる裂け目「網膜裂孔」とに分けることができ、穴や裂け目から硝子体内の水分が網膜の下にしみこんでいき、網膜が眼球壁側からはがれてしまうことを網膜剥離といいます。
症状は様々で、ゆっくりと病状が進んでいくものや、比較的短時間で視野欠損や視力低下がみられることもあります。放置してしまうと、失明に至ってしまう病気ですが、早期発見でほとんどの場合が、レーザーや手術で治療が可能です。
後発白内障
白内障は、目のレンズでもある水晶体が濁る病気で、加齢とともにおこります。
白内障手術は、水晶体のすべてを取り除くのではなく中の濁りだけを取り除き水晶体の袋は残し眼内レンズを入れます。
その袋が濁ってしまう病気を後発白内障といいます。
流行性角結膜炎
流行性角結膜炎は、アデノウイルスと呼ばれるウイルス感染によりひきおこされる角結膜炎の1種です。アデノウイルスにはいくつかのタイプがあり、それによって引き起こされる角結膜炎もいくつかの種類がありますが、流行性角結膜炎はアデノウイルスによって引き起こされる角結膜炎のうち最も症状の強いものです。主にアデノウイルス8、19、37型が流行性角結膜炎の原因となります。このウイルスはとても感染力がつよく、流行性角結膜炎は昔から俗に「はやり目」と呼ばれています。
とくに結膜炎が始まって最初の数日間はもっとも他の人に伝染させてしまう可能性が高い時期です。接触感染で容易に伝染し、とくに人が濃密に接触する機会の多い、職場、病院、家庭内などの場所や、プールの水などを介して、流行的発症がみられます。
ウイルスに感染しても最初の約5日〜2週間は潜伏期間で、その後急に発症します。発症はどの季節でも起こりますが、夏に多い傾向があります。また、発症年齢による頻度の差はあまりなく、どの年齢でも起こりえます。
流行性角結膜炎の症状は、急性に発症する結膜の充血、まぶたの浮腫、めやに、流涙(涙がたくさんこぼれる)、眼痛などです。片眼性であることが多いのですが両眼性の場合もあります。また、耳の前に存在するリンパ節の腫れ、圧痛を伴うこともあります。
- ●手で目をこすらない
- ●流水でよく手を洗う
- ●タオルなど、手や顔を拭くものは自分専用、もしくはティッシュなどの使い捨てを使用する
- ●お風呂は患者さんが最後に入る
目を触った手でそのまま色々なところを触ると、そこにウィルスがついてしまいます。目を触ったらそのままどこにも触れないようにしてすぐに手を洗いましょう。
アレルギー性結膜炎
アレルギー反応によっておこる結膜炎で、眼のかゆみや流涙、めやに、結膜充血、まぶたの腫れなどの症状が現れます。アレルギーを引き起こす原因物質として、大きくは、季節性アレルギー性結膜炎(花粉症をおこすスギ、ブタクサなどの花粉)、通年性アレルギー性結膜炎(ダニ、ハウスダスト、ペットの毛、薬剤)があります。
その他、コンタクトレンズや涙液の減少が原因となる場合もあります。
まずは原因を調べ、抗アレルギー薬や目薬での治療を行いますが、なるべく原因となる物質を回避するという患者さんの日頃のケアも大切になります。
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●季節性アレルギー性結膜炎の場合
花粉が飛散する時期の外出は、めがねやマスクを使用し、できるだけ花粉との接触を避けるようにしましょう。
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●通年性アレルギー性結膜炎の場合
部屋をよく掃除し、常に清潔に保ちましょう。なるべくじゅうたんは避け、ほこりがたまらないようにします。